能登半島における文化財レスキューと能登由来博物館資料の再評価 ―考古学を中心に―
資料館
松永 篤知 特任助教

4月20日、資料館の松永篤知特任助教は、石川考古学研究会の文化財レスキューボランティアに加わり、珠洲市内に分布する古墳時代の横穴墓の被災状況を確認する調査を行いました。横穴墓とは、6世紀から7世紀にかけて丘陵斜面に掘られた墓の一種で、珠洲市は分布が濃密な地域として知られています。当時の墓制や社会構造を知る上で重要な存在であり、その被災状況を正確に把握することは急務です。
調査当日は、岩坂塚亀横穴群、岡田横穴群(写真1)、藤瀬山横穴群、岩坂向林横穴群、鈴内横穴群等を回り、それぞれの現状を観察・記録しました。横穴群によって状況は異なり、ほとんど被害がなかったものがあった一方で、大きく崩落してしまったものもありました。珠洲の横穴墓は、珪藻土の層を掘って築かれており、掘りやすさの反面、崩れやすいということを目の当たりにしました。また、確認調査の際、横穴墓の近くで珪藻土の採掘坑をいくつも見かけ、七輪等に珪藻土を利用する地域の文化遺産のことも改めて認識しました。
なお、本学資料館には、かほく市余地経塚から出土した12世紀後半の珠洲焼の完形品(壺・鉢各1点)があり(写真2)、2024年3月刊行の『金沢大学資料館紀要』第19号に詳しく紹介しました(※)。資料館には、志賀町龍護寺旧蔵の平安期木造仏4躯もあり、これら能登由来博物館資料の再評価および価値発信を進めていく必要があります。
※参考資料:松永篤知「石川県かほく市余地経塚出土の珠洲焼について」金沢大学資料館紀要、第19号、2024
写真1:珠洲市岡田横穴群(1号横穴墓)(4月20日撮影)
写真2:かほく市余地経塚出土珠洲焼壺(金沢大学資料館所蔵)
【研究者情報】
資料館 松永 篤知 特任助教