令和6年能登半島地震(マグニチュード7.6)の発生メカニズム

理工研究域地球社会基盤学系
平松 良浩 教授

群発地震
複数の断層の連動

 理工研究域地球社会基盤学系の平松良浩教授は、令和 6年能登半島地震(マグニチュード 7.6)の発生メカニズムを調査しています。科学研究費補助金(特別研究促進費)による総合調査(能登半島北東部において継続する地震活動に関する総合調査(22K19949)および令和 5年 55日の地震を含む能登半島北東部陸海域で継続する地震と災害の総合調査(23K17482))の研究成果を踏まえたものです。

 

 令和 2年 12月頃から活発な地震活動が継続していた能登半島北東部を震源とする M7.6 の地震が、令和 6年 11日 16:10頃に発生しました。

 石川県で起こった地震としては、歴史上最大規模の地震であり、初めて震度7を観測し、広い範囲で震度 6強、6弱の強い揺れを観測し、甚大な被害が生じました。震源域は能登半島北岸に沿うように北東一南西方向に延びており、南東に傾斜した複数の断層が連動した地震であると考えられます。位置的には既に知られている海底の活断層である珠洲沖セグメント、輪島沖セグメント、猿山沖セグメント等に対応しています(図1)。

 ただし、上記の海底活断層が今回の M7.6 の地震を引き起こしたのか、それとも、それらと並行する別の断層の活動により発生したのかは今後詳細に分析する必要があります。

 M7.6 の地震の震源は、令和 2年から継続する群発地震の震源域に位置しています。この群発地震は、地殻深部から上昇した水のような流体が原因で発生したものであると考えられています。上昇してきた流体が南東に傾斜する断層帯に入り、断層帯深部では断層の開口(膨張)と逆断層型のスロースリップを引き起こし、周囲の断層を動きやすくする力を与えていました。また、断層帯に沿って浅部に移動した流体はその場所にある規模の小さな断層を動きやすくしました。これら 2つの要因により長期間にわたる群発地震活動が継続していました(図2)。

 M7.6 の地震の震源付近はこれら 2つの影響を強く受ける場所であり、それらの影響により M7.6 の地震がトリガーされたと考えられます。また、地殻変動の変動源による周囲の断層を動きやすくする力は珠洲沖セグメントや輪島沖セグメント等の周囲の大きな断層にも働いており、群発地震の発生以前と比較して、断層破壊が起こりやすい状態になっていました。そのため、珠洲沖セグメントや輪島沖セグメントの境界付近でトリガーされた断層破壊が両側(北東側と南東側)に拡がり、これらのセグメントまたは並行する断層群を次々と破壊し、最終的に100 km 程度の長さを持つ震源域で断層破壊(断層のずれが生じ M7.6 の地震規模になったと考えられます。

 この M7.6 の地震によるひずみの変化により、能登半島周囲の活断層や地下の断層は地震が起こりやすい状態になっていると考えられます。引き続き、規模の大きな地震の発生に注意する必要があります。

(注:上記の文章は令和6年13日の時点のもので、今後の研究の進展により内容が変わることがあります)

 

図1:能登半島北岸沖の海底活断層の分布とセグメント区分(井上・岡村, 2010)。 カラーの丸は気象庁一元化震源データによる地震の分布。黒線の矩形は 1729年能登・佐渡の地震(Hamada et al.2016)2007年能登半島地震の震源断層(Hiramatsu et al., 2008)

図2:M7.6の地震の震源付近の模式図

※平松教授の解説は,以下のポッドキャストからもお聞きいただけます。

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山崎デスクの気になるニュースな現場、ニュースな人 NHKラジオ「NHKジャーナル」
「能登半島地震 ~地震発生メカニズムと今後見通し~」
放送日:令和6年1月4日放送より
インタビュー:平松 良浩 教授
デスク:山崎淑行
聞き手:打越裕樹/結野亜希

【研究者情報】 
 理工研究域地球社会基盤学系 平松 良浩 教授